環境に配慮した物流戦略:持続可能なサプライチェーンの構築
環境負荷を低減する物流戦略と持続可能なサプライチェーン構築の方法を解説。モーダルシフト、共同配送、エコドライブなど具体的な取り組みを紹介します。
持続可能な物流の重要性
物流部門は、企業活動におけるCO2排出量の大きな割合を占めています。日本の物流部門からのCO2排出量は、全体の約20%に達するとされており、環境負荷低減の重要なターゲットとなっています。
持続可能な物流(グリーンロジスティクス)への転換は、環境負荷の低減だけでなく、燃料コストの削減、規制対応、企業イメージの向上など、多くのメリットをもたらします。また、2025年からの炭素税導入を見据えると、物流の脱炭素化は経営上の重要課題となっています。
環境に配慮した物流の主な取り組み
1. モーダルシフト
トラック輸送から、CO2排出量の少ない鉄道や船舶による輸送への転換を図る「モーダルシフト」は、物流の環境負荷低減の柱となる取り組みです。鉄道輸送のCO2排出量はトラック輸送の約1/11、船舶輸送は約1/5と大幅に少なくなります。
長距離輸送(500km以上)では特に効果が高く、国土交通省も推進しています。ただし、ドア・ツー・ドアの輸送には対応できないため、トラックとの連携(複合一貫輸送)が必要です。
2. 共同配送・混載輸送
複数の企業や荷主が配送を共同化することで、配送効率を高め、車両数や走行距離を削減する取り組みです。特に都市部での配送や、地方への小口配送で効果を発揮します。
業界内での水平連携だけでなく、異業種間での連携も増えています。また、物流事業者が主導する共同配送プラットフォームも登場しています。
共同配送のメリット
環境面
- CO2排出量の削減(20〜40%)
- 交通渋滞の緩和
- 騒音・大気汚染の低減
経済面
- 物流コストの削減(15〜30%)
- 車両稼働率の向上
- ドライバー不足への対応
3. 輸送効率の最適化
以下のような取り組みにより、輸送効率を高め、環境負荷を低減することができます:
- 配送ルートの最適化:AIや最適化アルゴリズムを活用した配送計画により、走行距離を最小化します。
- 積載率の向上:荷物の形状や積み方の工夫、帰り便の活用などにより、車両の積載効率を高めます。
- 適切な車両サイズの選択:輸送量に応じた適切なサイズの車両を選択することで、無駄なエネルギー消費を抑えます。
- 物流拠点の最適配置:需要地に近い場所に物流拠点を配置することで、輸送距離を短縮します。
4. 低炭素車両の導入
環境負荷の少ない車両への転換も重要な取り組みです:
- 電気自動車(EV):特に短距離・小型配送に適しており、CO2排出量をゼロにできます。充電インフラの整備が課題です。
- 燃料電池車(FCV):水素を燃料とし、長距離輸送にも対応可能です。水素ステーションの整備が課題です。
- 天然ガス自動車(CNG/LNG):ディーゼル車と比較してCO2排出量が約20%少なく、大気汚染物質も削減できます。
- ハイブリッド車:従来のディーゼル車と比較してCO2排出量を約20〜30%削減できます。
5. エコドライブの推進
急発進・急加速の抑制、アイドリングストップ、適切な車間距離の確保などのエコドライブを推進することで、燃料消費量を5〜15%程度削減できます。
デジタルタコグラフやテレマティクスシステムを活用して、ドライバーの運転状況をモニタリングし、フィードバックすることで効果を高めることができます。
6. 包装・梱包の最適化
過剰包装の削減、リターナブル容器の活用、軽量化素材の使用などにより、輸送重量を削減し、環境負荷を低減することができます。また、積載効率を高めるための包装設計も重要です。
持続可能な物流の実現に向けた課題と対策
コスト面の課題
環境に配慮した物流への転換には、初期投資や運用コストの増加が伴うことがあります。しかし、長期的には燃料コストの削減や炭素税対策としての効果が期待できます。
政府の補助金や税制優遇措置を活用することで、初期コストを抑えることも可能です。また、環境負荷低減の取り組みを顧客や投資家にアピールすることで、企業価値の向上につなげることができます。
技術面の課題
低炭素車両の航続距離や充電・水素充填インフラの整備、共同配送のためのプラットフォーム構築など、技術面での課題もあります。
業界団体や行政との連携、物流テック企業との協業などにより、これらの課題に対応することが重要です。また、段階的な導入計画を立て、技術の進化に合わせて展開していくアプローチも有効です。
まとめ:持続可能な物流戦略の構築に向けて
環境に配慮した物流への転換は、企業の社会的責任を果たすだけでなく、長期的なコスト削減や競争力強化にもつながる重要な経営課題です。
モーダルシフト、共同配送、輸送効率の最適化、低炭素車両の導入、エコドライブの推進、包装・梱包の最適化など、さまざまな取り組みを組み合わせることで、効果的な環境負荷低減が可能になります。
自社の物流特性や課題を分析し、短期・中期・長期の目標を設定した上で、段階的に取り組みを進めていくことが重要です。また、サプライチェーン全体での連携や、デジタル技術の活用も効果を高めるポイントとなります。
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