スコープ2とは
スコープ2は、企業が購入または取得した電気、蒸気、熱、冷却などのエネルギーの生成過程で発生する間接的な温室効果ガス(GHG)排出を指します。これらは企業の施設外で発生しますが、企業活動に起因する排出として計上されます。
スコープ2排出量は、多くの企業にとって全体の排出量の中で大きな割合を占めており、特にオフィスや商業施設などでは最も重要な排出源となっています。
スコープ2の排出量を削減するためには、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの導入などが効果的です。
スコープ2の特徴
- 購入したエネルギーに関連する間接排出
- 多くの企業で排出量の大部分を占める
- 削減対策が比較的実施しやすい
- 温対法の報告対象
- マーケット基準とロケーション基準の2種類の算定方法がある
スコープ2の算定方法
スコープ2の排出量は、基本的に「活動量 × 排出係数」で計算します。環境省が公表している「温室効果ガス排出量算定・報告マニュアル」に基づいた算定方法を解説します。
基本計算式
CO2排出量(t-CO2) = 電力・熱使用量 × 排出係数
1. 電力使用に伴う排出
オフィスや工場などで使用する電力による排出です。
エネルギー種類 | 活動量の単位 | 排出係数(kg-CO2/単位) |
---|---|---|
電力(全国平均) | kWh(キロワット時) | 0.470 |
電力(東京電力) | kWh(キロワット時) | 0.468 |
電力(関西電力) | kWh(キロワット時) | 0.352 |
電力(中部電力) | kWh(キロワット時) | 0.426 |
計算例:オフィスの電力使用の場合
年間電力使用量: 100,000 kWh
排出係数(全国平均): 0.470 kg-CO2/kWh
CO2排出量 = 100,000 kWh × 0.470 kg-CO2/kWh = 47,000 kg-CO2 = 47.0 t-CO2
2. 熱(蒸気・温水・冷水)使用に伴う排出
地域熱供給や熱供給事業者から購入した熱の使用による排出です。
エネルギー種類 | 活動量の単位 | 排出係数(kg-CO2/単位) |
---|---|---|
産業用蒸気 | GJ(ギガジュール) | 0.060 |
産業用温水 | GJ(ギガジュール) | 0.057 |
産業用冷水 | GJ(ギガジュール) | 0.057 |
計算例:地域熱供給からの温水使用の場合
年間温水使用量: 1,000 GJ
排出係数: 0.057 kg-CO2/GJ
CO2排出量 = 1,000 GJ × 0.057 kg-CO2/GJ = 57 kg-CO2 = 0.057 t-CO2
3. マーケット基準とロケーション基準
スコープ2の排出量は、「マーケット基準」と「ロケーション基準」の2つの方法で算定することが推奨されています。
電力グリッドの平均排出係数を使用して算定する方法です。地域や国の平均的な電力の排出強度を反映します。
- 日本では電気事業者別排出係数(デフォルト値)を使用
- 地域の電力網の実際の排出強度を反映
- 再エネ証書などの購入は反映されない
企業が契約している電力の排出係数や、再生可能エネルギー証書などの購入を反映した算定方法です。
- 日本では電気事業者別排出係数(調整後)を使用
- 再エネ証書(J-クレジット、非化石証書など)の購入を反映
- 企業の再エネ調達努力が反映される
スコープ2の排出量削減対策
- LED照明への切り替え
- 高効率空調設備の導入
- 断熱性能の向上
- エネルギー管理システム(BEMS/FEMS)の導入
- 太陽光発電システムの設置
- 再エネ電力プランへの切り替え
- 再エネ証書(J-クレジット、非化石証書など)の購入
- コーポレートPPA(電力購入契約)の締結
スコープ2の算定における注意点
- 最新の排出係数の使用
電気事業者別排出係数は毎年更新されるため、最新の係数を使用することが重要です。
- マーケット基準とロケーション基準の両方での算定
国際的なイニシアチブ(GHGプロトコルなど)では、両方の基準での算定・報告が推奨されています。
- 再エネ証書の二重計上の回避
再エネ証書を購入した場合、その効果を適切に反映し、二重計上を避ける必要があります。
- テナントビルでの電力使用量の把握
テナントビルに入居している場合、個別メーターがなければ、面積按分などの方法で使用量を推計します。
関連資料
最新の電気事業者別のCO2排出係数が公表されています。
公式サイトを見る電力使用量などのデータを入力するだけで、簡単にスコープ2排出量を算定できるExcelツールです。
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